ゴースト 〜アトリエの幻〜(前編)


「お前の事が好きだからに決まってるだろ」

どういう反応をされるだろうか。
ロゼの心臓は激しく鼓動をした。

「そりゃ、嫌い合ってたら共同生活なんて送れないもの」

<は?>
それはほんの一瞬の間に頭の中を駆け巡ったどの反応とも違っていて。
きょとんと、「なに当たり前のこといってるの?」くらいの感じであっさり返されれば、ロゼはそれ以上なにも言えない。

「ま、まぁ、確かにそうだな……」

「変なの」

<その好きとは、大分意味が違うんだが……>
だが、そこまで言えるほど、ロゼも恋愛慣れはしていない。

「でもそう、好意で心配してくれたんなら、まぁいっか」

「いや、そもそも心配ってのは好意以外であるのか?」

「あんたのことだから、また私のこと子どもだからとか馬鹿だからとかそんな理由だと思ったのよ」

「あー……」

言われて見れば、そういう理由もなくはない。

「今、納得したわね……?」

思わず宙に視線を泳がせたことが仇となり、ウルリカはロゼをキッと睨みつけた。

「き、気のせいだ」

慌てて誤魔化そうにも時すでに遅く。

「天誅!!」
「ぐはっ!」

怒りの拳が鳩尾に見事に入り、ロゼは本日最後の犠牲者となった。





新しい調合法を封印して一週間、ウルリカはやっと簡単なラフ調合なら許してもらえるようになった。
ペペロンも採取から一度帰ってきて久しぶりにアトリエに三人がそろい、ウルリカは調合、ペペロンが選別、ロゼが武器の手入れと整理を していると、鼻歌まじりに細工をしていたウルリカが目を輝かせて作り終えたアイテムを掲げた。

「出来た!」
「なんだそれは」

形は白の瞳だが、グラスの部分の色が黒い。

「宵闇の黒水晶を使って作ってみたの。白の瞳ならぬ黒の瞳ね! レンズの属性を変えただけだからとりあえず爆発はしないし」
「なるほどな」
ウルリカにしてはまともな発想だ。

「さーて、効果はなにかな〜……」

試しに自分でかけてみると、部屋の中におかしなものが見えた。

「……あれ?」

思わずグラスをかけたまま目を細める。

「どうした?」
「あれぇ〜〜〜?」
「おねえさん?」

あまりにも一点を凝視するウルリカにペペロンも疑問の声を上げる。

「ちょっと、これかけてみて」
「なんだ?」

新作の曰く「黒の瞳」を手渡され、ロゼは言われるままにかけてみる。
すると確かに部屋が少し薄暗くなったが、ほかに変化はない。
「別になんともないぞ」
「んで、そのまま、ソファーのほう見てみ」
「?」
黒い眼鏡をかけたまま後ろを振り返りソファーを見ると、女性がひとり、立っていた。
「あれ?」
さっきまでだれもいなかったはずだ。
「で、はずして」
「あぁ」
外すと、女の姿が消える。
「ええ?」
これは……。
「女の人が見えない?」
ウルリカが「なんでだろ。気のせいじゃないよね?」と聞いてくる。
確認のためにもう一度眼鏡をかけてみるとやっぱり長い黒髪のロゼと同い年くらいの女性がソファーの前に立ってこちらを見ていた。
そして、
『もしかして、見えてらっしゃるんですか?』
その女は眉根を寄せて凝視しているロゼに向かって話しかけたのだ。
「……なぁ、ウルリカ、ペペロン」
「ん?」
「なんだい?」
ロゼは女を見て固まったまま聞く。
「確か、このアトリエ、幽霊が出るって噂があったんだよな。どんなのだかも知ってるか?」
「えーっと」
「たしか、家主さんの話だと長い黒髪ですごい美人だったって話じゃなかったかなぁ」
「あー、そうそう!すごい人気のある美人で、彼女を好きだって男がその家族を巻き込んで無理心中したんだって!」
ふたりが思い出しながら話すと、女性は少し悲しそうにうなづいた。
「まさか、名前までは聞いてないよな?」
「おいらは知らないよ」
「私知ってる!酒場で聞いたもの。んと、なんだっけ、結構よくある名前よ。……あ、そうそう、アンジェラ!!」
「アンジェラ?」
『はい。アンジェラといいます』
ロゼが聞き返した名前に反応してそう言われれば間違いない。
「でも、なんでいきなりそんなこと聞くの?」
「ほら」
首をかしげるウルリカに眼鏡を返すとつけるように言う。
「それかけると見える、ソファの前にいる人がアンジェラさんだそうだ」
ロゼは腕を組んで俯き、再び眼鏡をかけたウルリカがアンジェラを見て目を見開く。
「うっそ」
「え?なになに?いったいどうしたんだい?」
わけのわからないペペロンがだれがいるのかときょろきょろした。
「えーっと、アンジェラ、さん?」
ウルリカも本人に確認しているのだろう。
宙に向かって話しかけ、次いで驚いたように声を上げた。
「うわ!すごい!ほんとだ!!」
今のロゼには見えないし聞こえないが、だいたいどういうことが起きているのかは想像がつく。
「ちょ、ちょっと待ってて!!」
そう言ってウルリカは、人数分の黒の瞳の製作に取りかかった。




「おお、ほんとだ!いるねぇ。どうも、初めまして」
<相変わらず大物だな>
追加で作られた眼鏡をかけて、普通に挨拶をするペペロンにロゼは呆れた。
一応ウルリカの手前取り乱さないようにはしたが、本当は彼女がしゃべった瞬間、心臓が止まりそうなほど驚いていたのだ。
<まさか、本当にこの目で幽霊を見ることになるとは……>
学園にいた頃、担任であるグンナル教頭が自分のアトリエには幽霊や宇宙人もいたなどと自慢していたが、まんざら嘘でもない かもしれない。
<確かにあの人ならやりかねないしな>
つくづく、自分はこれまで平凡な人生を送ってきたのだなぁと思う。
『初めまして。なんだか変ですね、今更ご挨拶するのも』
幽霊とは思えない現実味を持って、彼女はクスリと笑う。
『私はずっと、みなさんを知っていましたから』
「あ、そっか。見えなかったけどいたんだもんね」
「そういえば、そういうことになるねぇ」
ウルリカも驚いたのは最初だけで、今は普通に会話をしている。
この現状をどう受け入れていいかわからないのは、どうやら自分だけらしい。
この場に他の誰かが来たら、アトリエの中で3人黒眼鏡をかけて、ソファに話しかけているという異様な光景が見られるだろう。
「うー?」
専用のミニサイズの眼鏡をかけさせられたうりゅはまだよくわかっていないらしくアンジェラの回りを飛んでいる。
「ね、ね、お願いがあるんだけどいいかな?」
そんな中、ウルリカがもう我慢できないとばかりに言い出した。
『はい、なんですか?』
「触っていい?」
「いい加減にしろ」
黙って見守っていたロゼが、子どものようにはしゃごうとするウルリカを小突く。
「彼女がどうしてこうなったのか知ってるだろ。なにか未練があるからいまだにこの場所に留まっているんだろうし、まず話を聞くこと から始めよう」
「なによケチー」
頬を膨らますウルリカをもう一度小突く。
『ありがとうございます!話、聞いていただけるんですね!』
「一応、それが妥当だろう」
「そうだねぇ、こういうのは話を聞いて成仏してもらうってのが定番だよね」
このアトリエに本当に幽霊がいると分かった以上放っておくわけにもいかない。
「やっぱこういうのって未練があるからでしょ?噂聞いただけだとすごくかわいそうだし、なにか願いがあるなら言ってみて。力に なるわよ」
小突かれて拗ねていたウルリカも、話に乗ってくる。
『嬉しい、ずっとみなさんとお話できたらって思っていました』
本当に嬉しそうにアンジェラは満面の笑顔で三人を見る。
『お友達になってください!』
「え?」
「はい?」
「友達?」
予想外の願いに、3人は間の抜けた反応しかできなかった。
「えーっと、友達?」
とりあえず代表してウルリカが聞き返す。
『はい。私、友達いなかったもので……』
詳しく聞いてみるとこうだった。

アンジェラは小さい頃から見た目で街では評判だった。
そのせいで女には妬まれ、男にはいやらしい目でしか見てもらえなかった。
『私は、普通でいたかったのに』
そしてそのまま、だれとも親しくなれず18歳の誕生日を目前に、病的にそして一方的に彼女のことを愛し、その上思い込みの激しい ひとりの男に家族を巻き込み殺されてしまった。
「なんていうかその……」
「不幸としか、言いようがないね……」
確かにアンジェラは美しい。
幽霊の姿でよく見ると透けてはいるが、まっすぐで艶のある黒髪、同じく大きな黒曜の瞳が潤んで見つめてくれば同じ女のウルリカでさえ ドキリとする。
顔立ちは小さく、鼻筋が通っていてまさに非の打ち所が無い。
『お友達に、なってもらえますか?』
そんな彼女に懇願され、なぜか顔を赤くしたウルリカが胸をどんと叩いて請け負った。
「そんなことでよければ喜んで!! 新しい同居人が増えて嬉しいわ」
そしてこのアトリエにはウルリカに逆らえる人物はひとりもいない。
「うー。ともだち!」
「おいらも友達が増えてうれしいよ!」
「同居人は仲良くあるべき、だしな」
その日から、アトリエでだけ黒眼鏡をかけるという3人の変な生活が始まった。




「ねぇ、アンジェラは外に出ないの?」
『出ないというか、出れないんです。ドアのところに見えない壁のようなものがあって』
「じゃあずっとここに?」
『はい』
うりゅを膝に抱いたウルリカは、幽霊のアンジェラに興味津々で、なかなか仲良くやっていた。
今もふたり仲良くソファにすわり会話をしている。
ただアンジェラの場合、本当に座れているのか疑問だが。
「ごめんねー、うるさかったでしょ」
そういいつつ、触りたいという希望を快く了承してくれたアンジェラの体を腕が突き抜ける様を試しているあたり、あまり反省はして いなさそうだ。
『うぅん、ウルリカが来てから、私すごく楽しかった』
にこりと答えるアンジェラに再びウルリカは頬を染める。
「そ、それならいいんだけど」

<なぜ赤くなる>

テーブルに座り、横目でふたりの様子を見ていたロゼはだんだん不安になってきた。
リリアは別にしても、クロエやエト、酒場のウェイトレスなど女性に対してウルリカは優しい。
<まさか……、いや、そんなことは>
変な考えが浮かび、馬鹿らしいと打ち消す。
どうして自分は彼女のこととなると冷静な判断が出来なくなるのだろう。
「かわいい女の子が談笑する光景っていうのは、微笑ましくていいねぇ」
新しく見つけた採取地の地図を作成しながらペペロンは嬉しそうに言った。
「ちょっと薄暗いのが難点だけど」
「この眼鏡の色、どうにかした方がいいな」
ただでさえ建物の中は窓があろうと薄暗くなりがちなのにそのうえこの黒眼鏡ではものが見づらくて仕方が無い。
「改良するか」
霊が見えるというのが黒水晶の効果ならそれを変えるわけにはいかない。
<極限まで水晶を薄く削ればどうだろう>
「ウルリカ。コンテナの黒水晶貰うぞ」
「どうぞー」
許可を取り、数個の水晶を持ってくるとさっそく研磨しだす。
「おいらも手伝おうか?」
「いや、大丈夫だ」
こうやってなにかに集中していないとまた変なことを考えてしまいそうだ。
その間にもふたりの会話が耳に入ってくる。
「ねぇねぇ、幽霊ってどんなことができるの?」
『そうですね、たとえば物を動かしたりとか』
そう言って視線をだれも座っていない椅子に向ければ、その椅子が宙に浮きゆらゆらと揺れる。
「すごいすごい!他には?」
『他ですか?うーん。あ!』
アンジェラはいたずらっぽく笑い、自分の髪をばさばさとかき乱してから俯いた。
「?」
なにが起こるのかとウルリカは集中する。
『こんなのとか〜』
「ぎゃー!!」
「えっ?」
「な、なんだ?!」
突然悲鳴があがり、それぞれ自分の作業に集中していたペペロンとロゼが慌ててふたりを見ると、そこには髪を振り乱し血だらけの 姿になったアンジェラと、悲鳴をあげて固まるウルリカがいた。
「うわっ」
「こわっ!」
長い黒髪と美貌の相乗効果で、体中を血に染めたアンジェラは相当怖い。
そしてそんな恐怖の姿から一瞬で元に戻ると3人の反応に満足したように笑った。
『今のが、幽霊の一番の特権ですよね』
つまり、さっきの姿で見える人を脅かしてきた結果、家賃が5000コールまで下がったのだろう。
「さ、さすがに、心臓に悪いわそれ」
「うー! うりゅいか、くるしい!」
力いっぱい抱きしめられ、うりゅが抗議の声をあげた。




アンジェラが見えるようになってから三日が経過したが、4人と一匹の生活は案外順調にいっていた。
ウルリカとペペロンはもともとこだわらない性格だし、ロゼは学園時代の波乱万丈な日々のおかげか幽霊がひとり増えたからといって あまり動じることも無い。
<ただ、なんだかすごい見られている気がするんだが……>
朝起きて、ペペロンと一緒に食事の用意をしているといつもアンジェラからの視線を感じるようになった。
振り返ると目が合いそうなので確かめづらい。
<まぁ、別に見られてるからといってどうもないか>
自分だけが見られているわけではないだろうし。
彼女は毎日24時間ずっとアトリエにいるわけだから、観察対象が自分たちしかいないのだ。
「おはよー」
「う。はよー」
「おはようおねえさん」
「お前、もう絶対飯の匂いで起きてるだろう」
ウルリカはうりゅを頭に乗せ、相変わらず食事の用意が終わるタイミングで目をこすりながら起きてくる。
「うん、おいしそうな匂いがするんだもん」
「あっさり認めたな」
「はっはっは、おねえさんはそういうところも野生児っぽいよね」
微妙にペペロンの発言の「も」という部分にひっかかったが、おなかも減ったので無視をして席に着く。
「あ、そうだ、メガネメガネ」
寝ぼけて忘れていた黒の瞳をパジャマのポケットから慌てて取り出し、改めてアンジェラに挨拶をする。
「おはよう、アンジェラ」
『はい、おはようございます』
昨日、ロゼが改良したおかげでだいぶ視界も良くなり不自由さが減った。
「ほんとはメガネ無しで見えるようになればいいんだけどねー。飲み薬とかでなにかできないかしら」
ほかの二人も席に着くと、ウルリカはいい意見がないかと聞く。
すると、アンジェラがいいんですと首を振った。
「え?いいってどういうこと?」
『私、たぶん、そんな長くここにいないかもしれません』
「どうして!?」
突然の報告にウルリカはショックを受け思わず立ち上がる。
「せっかく友達になれたのにかい?」
「ここから出れないんじゃないのか?」
ペペロンとロゼも困惑気味に聞く。
もともとの住人はアンジェラだ。もし自分たちに気後れしてなどということならなんだか申し訳ない。
「ペペロンがきもくてうざいから?それともロゼが無愛想で取っ付きにくいから?」
「って、おねえさん?」
「お前、その理由はひどいだろ」
『あ、あの、違うんです。そうじゃなくて』
揉めだした3人を見て慌てて訂正する。
『もう3年以上ここにとどまっていましたが、最近時々小さな光が見えるんです』
「光?」
『はい。今まで見たことのない光です。成仏ということを、出来る時期が来ているのかもしれません』
アンジェラの未練は友達が居ないことだった。
仲良くなれる同性も異性も居ずに、孤独な日々を送った生前。
今はそれを取り戻すかのように毎日が楽しい。
『だから、どうか喜んでください。これは、いいことでしょ?』
確かに悪いことではない。
しかし、わかっていてもウルリカは寂しかった。
「そうだけど。アンジェラが居なくなっちゃうのは、やだな」
寂しいしと素直にいうと、アンジェラは嬉しそうに笑った。
『あなたがそう言ってくれるから、私は満たされるんです』
そして余計複雑な表情になるウルリカを見て、『私も、寂しいんですよ?』と困ったように言うのだった。


食事も終わり、とりあえず今すぐにというわけではないとアンジェラがなだめると、前向きなウルリカはどうにか気を取り直した。
「そうよね。うん、それまでまだまだいっぱいお話ししましょ!」
常に心遣いを忘れず、優しいアンジェラはこれまでウルリカの周りに居なかったタイプの人間で、そのまっすぐで素直な言葉に言われた方が照れてしまうというのはあったが、とても好きだった。 少しでもそんな彼女の心の支えになれたら。
できれば生きているときに出会いたかったけれど、その願いはもう叶わない。
「あー、でも先に水用の樽がだいぶ痛んできたから買い足さないと。ペペロン、ついてきて」
「はーい」
「すぐ行ってくるわ!留守番お願いね」
「あぁ」
二人と一匹は急いで連れ立って出て行き、結果、ロゼはアンジェラとふたりだけでアトリエに取り残されることになった。
<気まずい>
自慢ではないが、ロゼは話しかけられることはあっても自分から女性に積極的に話しかけたことが今まで一度も無い。
また、話したことがあるのもリリアやエト、ウルリカなどひとくせもふたくせもあるちょっと通常とかけ離れた相手ばかりだ。
それでも何か会話をしなければと一生懸命頭を働かせる。
「えーっと……、アンジェラ」
『はい』
名を呼ぶと、スーッと歩くことなくそばへ寄ってくる。
<こういうところは幽霊っぽいな>
多少透けてはいるが、見た目は普通の人間そのものなのでつい忘れそうになる。
「その、本当にいなくなるのか?」
アンジェラと話すウルリカはとても楽しそうで、ペペロンではないが見ていて微笑ましいと思う。
考えてみればクロエと離れて初めて出来た同世代の友達なのだから、当然なのかもしれない。
『はい、たぶん』
「そうか」
なら仕方がない。
「ウルリカが寂しがるが、それは俺も、いいことだと思う」
ロゼ自身もアンジェラをとてもいい子だと思っていた。
そして多分ペペロンも。
「ウルリカだけじゃない。俺も、ペペロンも寂しいよ」
ほんの数日ではあるが、彼女はすでにこのアトリエにとけ込んでいて、いなくなるとなるとしばらく喪失感を味わうことにはなるだろう。
『ありがとうございます。優しいんですね』
別れを惜しまれるというのは、とても嬉しい。
それだけ自分が大切に思われているのだなと実感ができる。
<もう死んでいて幽霊だけど……>
いわば今は人生のロスタイムのようなものだ。 そのロスタイムでこれだけ思ってくれる友人ができるとは、どれだけ幸運なんだろう。
<だけど、もう一つだけ、叶えたい願いがある>
友達と、もう一つ、果たせなかったこと。
アンジェラは優しい言葉をかけてくれたロゼに、意を決して告白した。
『あの、それで、そのためにもロゼさんに協力していただきたいことがあるんです』
「俺にできることならよろこんで」
基本、ロゼは善人だ。
快く引き受けると返事をした。
まさか、こんな内容だとは思いもしなかったから。
『私、あなたに恋していいですか?』
「は?」
アンジェラのもう一つの未練は、たくさんの男に言い寄られながら、誰のことも好きになれなかったことだった。




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