『矜恃と心意気』
「手加減は無しだぞ」
「おにいさん、目が怖いよ?」
街の東の草原で、ロゼとペペロンが対峙する。
それを固唾をのんで見守るジェイクとその他、冒険者仲間。
「とりあえずおいらが思うにたぶん、いろいろ誤解があるんじゃあ……」
「問答無用!」
どうにかこの場を収めようとするペペロンの努力も虚しく、ロゼは地を蹴った。
「やっぱこの山は登らず迂回ルートにまわった方が……」
「そうだな。代わりにこっちの森を突っ切ろう。……どうした?」
今日は珍しく、ロゼとジェイクはアトリエで次の仕事の段取りを話し合っていた。
「いや、あれ」
話し合いの最中に、ジェイクが口をぽかんと開けて見ている視線の先にはウルリカとペペロンがいる。
「あの二人がどうかしたのか?」
一度振り返って確認したあと何を言いたいのかがわからずもう一度聞くと、訝しげな表情で聞き返される。
「どうかって、お前。あれ見てなんも思わんの?」
そう言われてもロゼにはわからない。
自分の分の錬金の終わったウルリカが、床に座って雨雲の石をせっせと磨いているペペロンの背にのしかかり邪魔をしているだけだ。
「あんたとっろいわねぇ。そんなんにいつまでかかってんのよ」
「だっていきなり二十個も渡されても無理だよぅ!」
泣き言を言う妖精に無茶ぶりの主人。いつもの光景だ。
「特に、変わったことは無いと思うが」
「お前、それ、おかしいぞ」
「何がだ?」
ペペロンの背にべったりと張り付きその肩に顎を乗せて話すウルリカ。
その図は部外者のジェイクから見たらラブラブカップル以外のなにものでもない。
そのことを小声で告げるとロゼは目を見開いて固まった。
「お? おーい、ロゼ?」
「確かに、そうだ……」
いつものこと過ぎて気にしていなかったが確かにこの二人は仲が良く接触も多い。
ペペロンからのコミュニケーションはいつもウルリカに拒否されているのでわかり辛いが、ウルリカが自分からくっついていく分にはなんら制限がないのだ。
「そういえば、買い物は常にペペロンが一緒だし……」
それは荷物持ちに適しているからだが。
「なにかあると必ず頼られるのもペペロンだ」
ロゼを頼ると内容によっては必ず説教や嫌味のおまけがつくからなのだが。
どっちも自覚が無く、ただペペロンはウルリカの妖精だからという理由だけで見逃していたロゼは目から鱗の落ちる思いがした。
(確かに仲が良すぎる!!)
驚きの表情のまま動かなくなったロゼにジェイクがトドメの一言を言った。
「お前の一番の恋の壁は妖精の旦那なんじゃね?」
ガーン!という音が聞こえたような気がした。
そんなロゼを見て、野次馬根性が騒ぐ。
「よし、こうしちゃいられねぇ! ロゼ、酒場で緊急会議だ! 嬢ちゃん、こいつ借りてくぜ!!」
そうしてショックから立ち直れないロゼをジェイクが半ば引きずるようにして出て行き、何も知らないウルリカとペペロンは一緒に「行ってらっしゃーい」と見送った。
「ほら飲め」
ジェイクはアトリエすぐ近くの金の牡鹿亭でレモネードを注文し、差し出した。
「……落ち着いたか?」
それを一気に飲み干したロゼは濡れた口を拭うと、やっと働き出した脳みそを絞って、これまで二人の関係を問題視しなかった理由を考えてみる。
「今までそんな風に見たことなかったからついあんたの言葉に踊らされたが、ペペロンとウルリカはそんなんじゃない! ……はずだ」
夕方近くになり、ポツポツと人の居る酒場の隅で、誰にも聞かれまいと声を抑える。
「ペペロンは俺の気持ちを知ってるし応援もしてくれてる。恋敵じゃない」
「旦那はそうでもよ、嬢ちゃんはどうなのよ」
基本、ロゼとウルリカの関係を楽しんでいるジェイクはズバッと言い切った。
「俺から見ても旦那はいい男だもんなー。ちょいと変わっちゃいるが懐でかいし頼りがいあるし、なにしろ強いし」
「……俺をへこませて楽しいか?」
彼が強いことは誰よりもロゼが認めている。
学生時代にルゥリッヒから助けてもらって以来、痛いほどに力の差を感じているのだ。
無言で恨みがましく睨みつけられ、「悪い悪い、言い過ぎた」と謝るが顔は笑ったままだ。
「でもよ、ロゼ。お前、なんか旦那に勝ってるとこあんのか?」
その質問にロゼはしばらく考えた後、「錬金術と、料理だな」と答えた。
採取も戦闘も負けるし、ウルリカに仕事を頼られる度合いも彼女とのコミュニケーション能力も負けている気がする。
(容姿関係が入ってないあたりこいつらしいよな)
あくまでウルリカの役に立つ度で考えるところが彼らしい。
ロゼの女受けする風貌をつくづく見ながら(あー、でもあの嬢ちゃん相手じゃ確かに見た目は意味ないか)とも思う。
とにかく、
「お前さ、男が料理の腕とか悲しくないの?」
トドメのひとことに自覚があったのか、「言うな……」と呻いてロゼはテーブルに突っ伏した。
その日から人知れずロゼの戦いが始まった。
ウルリカが買い物に行くと言えば自ら進んで荷物持ちになり、欲しい物があると聞けば採りに行き、言われる前に中和剤や燃える砂などの消耗の激しいアイテムを作って用意しておく。
そんな甲斐甲斐しいロゼに、とうとうウルリカが我慢出来ずに言った。
「なんかあんた、気持ち悪い」
「なっ……!」
ロゼの一生懸命は裏目に出て、なにからなにまで世話を焼く鬱陶しさに、逆に避けられるようになってしまっていた。
どうしていいかわからずジェイクに相談に行くと案の定爆笑され、「元はと言えばあんたのせいだ」と抜いた剣はあっさり白羽取りされる。
「悪かったって! お前があんまりに期待通りだった……じゃなくて、かわい……でもなくて、あー、責任は取る!」
なにを言っても振り下ろされた剣に力が篭もるので、両手の平でギリギリ刃を止めていたジェイクは最後にはヤケになって叫んだ。
「その言葉、忘れるなよ」
やっと剣を鞘に収めロゼが座り、ほっと息をつくとさっそく提案をする。
「お前は根本から間違ってるんだよ。男が白黒つけるっていったら方法は昔から一つしかないだろ」
「やっぱり、そうなるのか」
あえて取らなかった手段を言われ、ロゼは唸る。
「でもそれは……」
ペペロンは基本平和主義者だし、仲間だ。
それになにより力で勝てるとは思えない。
「敵わないからって、お前、彼女を諦められるのか?」
「いつのまにそこまで大げさな話になったんだ?」
「今だ」
「……」
確かに一度、正面からぶつかって戦ってみたいとは思っていた。
ジェイクにそそのかされてというのが気にくわないが、こんなことでもないと完全に身内と認識してしまっているペペロン相手に剣を向けるようなことは出来ないだろう。
「そうだな。いつかはやらなきゃいけないと思っていた」
それはけっしてこのような理由ではなく、過去の、無力だった自分と決別をするという意味でだったが、頷いたロゼにジェイクはニヤリと笑った。
なにをどうやったのかは分からないが、翌日の明け方にはペペロンとの決闘の舞台が整っていた。
ロゼとペペロンの他に審判役の発案者であるジェイク。それにこういうことに鼻の利く西酒場の野次馬が数人。
「あんたが受け入れてくれるとは思ってなかったよ」
緑の草原に一陣の風が吹く。
「受けたというか、脅されたというか……」
ペペロンは棍棒を地に突き立て、困り顔で頬を掻いた。
ジェイクが訪ねてきたのは昨日の夜中。
迎えたのは在庫確認をしていたウルリカだった。
『よう嬢ちゃん。こんな夜更けに悪いね』
口ではそう言うもののまったく悪びれた様子もなく、ジェイクは片手を上げ挨拶をした。
ロゼは今彼の部屋にいる。酒場で酒を買い足してくると言って残して出てきたのだ。
『ジェイク? ロゼならいないわよ?』
『いいんだ。今日は嬢ちゃんと旦那に用があってな』
二階で寝ていたペペロンも呼び出され、三人でテーブルにつく。
『で、簡単に言うと、旦那に明日ロゼと遊んでやってほしい』
ジェイクはすぐに本題に入るが、残りふたりには内容が良く理解できなかった。
『遊ぶって?』
『なに? あいついい年して肩車とかしてもらいたいわけ?』
『あー、すまん。言い方が悪かった。つまり、あれだ。決闘?』
なぜか疑問系で言われた言葉にウルリカは身を乗り出しペペロンは身を引いた。
『え? なにそれ! おもしろそう!』
『け、決闘!? なんでおいらがおにいさんとそんな……!!』
予想通りの反応に笑いながらジェイクは説明する。
『ロゼは大人ぶっててもガキだからな。たまには本当の大人が背を押してやらんといかんわけよ。旦那だって分かってんだろ? 今のままじゃあいつは飼い慣らされた子犬だ。そろそろ壁を乗り越えにゃあなるめぇよ』
『う……』
心当たりのあるペペロンは苦い顔をし、ウルリカは『なに? なんの話?』とふたりの顔を交互に見る。
『ってことで、夜明けに東の草原な。よろしく』
『一応、行くけど……』
『なによー! なんの話よー!』
話に入れず怒り出したウルリカに、ジェイクは席を立ち側に寄って何事かを耳打ちし、『はぁ!?』と再び憤った彼女を放置してさっさと『邪魔したな』と帰っていった。
あとに残されたのは怒るひとりと戸惑うひとり。
回想しつつため息をつく。
「手加減は無しだぞ」
「おにいさん、目が怖いよ?」
すっかりやる気満々の相手に、ペペロンはまず話し合いでの解決を試みる。
「とりあえずおいらが思うにたぶん、いろいろ誤解があるんじゃあ……」
「問答無用!」
「うわわわ!」
ロゼの剣が慌てて構えたペペロンの棍棒に食い込んだ。
しばらく見ないうちに素早さも力も数段上がっている。
「おにいさんはもう、十分強いじゃあないか」
「ならそれを証明させてくれ!」
ジェイクとも今では互角の戦いを出来るようになったし、銀髪の狂戦士ルゥリッヒだって卒業間際に一度は切り伏せた。
しかしぺペロンだけは、ウルリカとロゼふたりがかりで全く手が出なかったルゥリッヒをひとりで引き受けかなりの痛手を負わせたあげく無傷で帰ってきた彼だけは、未だに力及んだことが無く、男として常にコンプレックスの対象だった。
ジェイクの言葉に乗せられたわけではない。
今までもずっと、ウルリカの側に共に在り続ける上で乗り越えなければならない壁だったのだ。
「ちょ、待っ……」
問答無用の言葉通り、息をつく暇もなく剣戟が繰り出される。
本気だ。
(おにいさんは、真面目過ぎるんだよなぁ)
ウルリカに嫌われたくないあまりに、我が侭を言えないでいる。
もっと自分に自信を持って接すればいいのにと横から見てやきもきしてしまう。
確かにペペロンはウルリカを守る存在ではあるけれど、それはロゼに対してもそうだ。
ウルリカもロゼもうりゅも、その他大勢の困っている人間達も、多少優先順位はあるが守りたいと思っている。
(おねえさんだけを守っておねえさんだけを愛してるのは、おにいさんしかいないのに)
それがどれだけ特別なことかを本人がわかっていない。
ジェイクが昨晩言っていたことの意味。
(一度真剣に、本気で向き合わないとだめってことかな、やっぱり)
それに一応ウルリカはペペロンにとっても特別な存在だ。
確かに易々と譲るというのは少しおもしろくないかもしれない。
(あ、あれだ! 今のおいらって娘をお嫁に出す父親っぽい!)
そう考えると俄然やる気が出てきた。
「ペペロン! 手加減は無しだと……!」
受け身一方のペペロンに苛立ちを覚えたロゼが言うと、ペペロンはなぜか突然嬉しそうに言った。
「よーし、おいらもおにいさんに渡さないぞぅ!」
まだまだかわいいなついてくる娘と思えば、簡単には渡せないという気持ちが芽生えてくる。
「回るよ〜!」
「くっ!」
触れれば吹き飛ぶ回転攻撃を避け、間合いを取る。
「当たったら痛いよー?」
「上等だ!」
やっとやる気になったペペロンと最初から本気のロゼの戦いは、見る男達がヤジを飛ばせないほどに白熱した。
勝負の終わりは唐突だった。
このままだとなかなか決着が付けられないと悟ったペペロンが武器を捨て、その拳を繰り出したとき、ロゼは声を上げることもなく吹っ飛んだ。
同時に意識も飛び、草地に転がる。
「あっちゃ〜」
その見事なやられっぷりにジェイクが片目をつぶり、野次馬も「あ〜ぁ」と落胆の声を出した。
ロゼほどの使い手となればわざと負けようとしてもわかってしまう。
仕方なく拳を振るったペペロンも気絶したロゼにやりすぎたと慌てて駆け寄ろうとするが、それはジェイクに止められた。
「いいって旦那。結局大事なのはあんたと本気でやりあったってことなんだから」
「で、でも……」
「鞭のあとはやっぱ飴でなくちゃな」
ぽんぽんと宥めるように肩を叩いたあと、しゃくった顎の先には、門から出てくるひとりの金髪の少女の姿があった。
「ぐ……」
脳がぐらぐらする。
見事なアッパーを顎に食らい、脳しんとうを起こしたロゼは顎ではなく頭を押さえて起きあがった。
「やーっと起きたわね。もう完全に日は昇っちゃってるわよ」
「……ウルリカ?」
目の前に居るはずのない顔があり、数回瞬きをするがもちろん幻覚ではない。
「なんでここに」
ウルリカは草地の上に足を延ばして座っていてその太股が自分の下にある。
どうやら膝枕をしてもらっていたということに気づいて嬉しいような情けないような、複雑な気分になった。
周りを見回すが、他に居たはずの男共の姿はない。
「みんなならもうとっくに街に帰ったわ」
その様子を見ていたウルリカが答え、ロゼの額にデコピンを食らわす。
「いてっ!」
「バカ」
やっと脳の揺れがおさまったところにもう一度衝撃を与えられたロゼは再び目眩を起こし後ろに倒れる。
それをぽすんと柔らかいウルリカの脚が受け止めた。
「あんたってほんとバカよねぇ」
そしてもう一度呆れたように、同じ言葉を繰り返される。
「なんで俺はいきなりバカを連呼されているんだ?」
ペペロンに負けたことは理解していが、今の自分の状況がいまいち掴めない。
「だってバカなんだもの」
三回目。
むすっと黙り込んでしまったロゼに、ウルリカは更に追い打ちをかけた。
「強くたって弱くたってあんたはあんたじゃない」
(ジェイクのやつ、なんか余計なことを言ったな)
決闘の場に来たのがペペロンだけだったのでウルリカには今回の話は漏れていないと思っていた。
好奇心旺盛で仲間はずれにされたりするのが大嫌いな彼女なら、知っていれば必ずその場に来ているはずだからだ。
しかしその予想は外れていたらしい。
「ジェイクになにを吹き込まれたかは知らないが、そういう問題じゃない」
上から顔をのぞき込む翡翠の瞳を真っ直ぐ見つめ、言い返すともう一度デコピンをされる。
「ジェイクはね、あんたが私とペペロンに認められたくて勝負を挑んだって言ってたわよ。自分が弱いから頼りにされてないと思ってるって」
「それは……」
違うけど違わない。
うまく言葉に出来なくて、ロゼは言いよどんだ。
「本当にそんなこと考えてたんならもう一度バカって言ってあげる」
「そうじゃない。似てるけど、違う」
そしてロゼは腕で顔を覆い、とうとう本音を吐いた。
「お前を護るのはいつだって、俺でありたいんだ」
それは恋を自覚する前からある思い。
二度と自分の力不足でウルリカを危険に晒したくない。どんな強敵であろうと、彼女とその間に立ちはだかるのは自分でありたい。
「どうしてそれがペペロンとの決闘になるのよ」
保護対象に思われているのは知っていた。
これまでもロゼはウルリカを脅威から避けようと、過保護っぷりを発揮していたからだ。
ただ、ウルリカはそれをロゼがフェミニストだからだと思いこんでいた。
微妙にお互いの認識がずれたまま、会話は進む。
「護りたいのに、俺には自信がなくて、ペペロンに任せた方が確実にお前を傷つけずに済むんじゃないかって思えて」
一番超えたい壁のはずなのに、結局それに頼って甘えていた。
どうせ適わないのだからと決めつけて避けていた。
「自分のそんな弱い部分に、踏ん切りつけたかったんだ」
「……よくわかんないけど、それでついたの? 踏ん切り」
「手応えは、感じた……かな」
届かないと決めつけていた頂に手がかかった後すぐ突き落とされてしまった感じだが、このまま鍛錬を続けていけばまた届くかもしれない。
少なくともはなから持っていた諦めと弱気は無くなった。
「んじゃ、帰りましょ。お腹減った!」
「わっ!」
ロゼは突然立ち上がったウルリカに心地良い枕から落とされてしまう。
「言って置くけど、私は守られてなんてあげないからね。あんたにもペペロンにも、誰にもよ!」
仰向けに寝転がったままのロゼにびしっと指をつきだし、ウルリカは宣言する。
「だからそんな悩み無駄! 無意味! 考える必要ない!」
「お前な……」
せっかくどれだけ大事に思っているかを告白したつもりなのにいきなり真っ向から否定され、一気に起きあがる気力を無くしてロゼはふてくされた。
「あぁそうだな。お前はそういう奴だよな」
「私はパートナーでしょ? 一方的に守って守られてなんて、そんな関係願い下げだわ」
同居人というだけではなく、お互いに助け合って生活してきた。
足りない部分を補える関係は、もうパートナーと言っても過言ではないとウルリカは思う。
まるで宣戦布告のような力強さで言われたセリフはすんなり胸に落ち、ロゼの気持ちを浮上させた。
「パートナー……か」
護らなければ助けなければ気に入られなければと必死になっていた自分が、一気に馬鹿らしくなる言葉。
(すでに俺は、ウルリカに認められていたのに)
まだ恋愛対象ではないにせよ、彼女の心にしっかり自分の存在は刻まれている。
「そうよ。だからもうあんな、気持ち悪いことはしないように!」
「気持ち悪いはないだろう。あれはあれで、まぁ、一生懸命だったんだ。いろいろと」
そして苦笑しつつ、服に付いた草を払って起きあがった。
「それにやっぱり考えないってのは無理だ。パートナーなのは認めるが、俺は男だからな」
男にとって譲れないモノがある。
「だれかさん曰く、男は、女性を護るためにいるらしいぞ」
「なにそれ! 差別よ差別! 今度私と勝負しなさい! こてんぱんにのしてその認識改めてやるんだから」
そう怒鳴ってから、ウルリカは肩を怒らせてドスドスと振り返らずに街へ帰ってしまう。
「やっぱり、好きだなぁ」
相変わらずあっさり自分の悩みを解決してしまうウルリカに惚れ直し、今日の食事はよりいっそううまいものを作ってやろうと、ロゼは思った。
BACK