贖罪 〜序章〜



───涙など、とうの昔に枯れ果てた…───


「う・・・くそ、オロチは?」
砂埃に数回咳き込んだあと、京は自分の上に乗った瓦礫をどけながら立ち上がった。カラカラの喉が痛む。少しよろけたがなんとか持ちこたえ、そのままの体制で目眩に耐える。
世界規模の格闘大会、通称KOFの決勝戦のあとに現れたオロチ、破滅を呼ぶ者との戦いは、これまでにないほど激しいものとなった。
今、こうして無事に立っていられるということは、封印に成功したということだろうか。
「…だよな?」
一人で納得しながら、よくこれだけのダメージですんだなといぶかしむ。吹き飛ぶ衝撃は凄まじく、すべてを瓦礫と化すほどであったのに…。
ほかの二人はどうなのだろう。
音も風もない、時の止まったような空間。大会の会場であったドームは舞台も観客席も跡形もなく、見渡す限りの瓦礫と変わり果てていた。少し白く霞んで見えるのは力の使いすぎのせいか。
「八神、神楽!どこだ!?」
一歩足を動かしただけでも体中がきしみ、京は痛みに顔をしかめる。
服も焼け焦げ擦り切れ、ボロボロの状態だ。今すぐここで膝をついてしまいたいほどの疲労に必死で抗いながら周りを見回し、自分の他に動くものはないか探す。
空はまだ白い。
どれくらい気を失っていたのだろう。
出うる限りの声でもう一度、チームメイトである二人の名を呼ぶがいくら待っても答えは返ってこない。
そしてふと、自分一人が生き残ったのではないかという最悪の不安が心をよぎった。
冗談じゃないっ!!
嫌々ながら無理矢理組まされたチーム。色々問題はあったが、これまでで最強のチームとなった。
草薙、八神、神楽の三人。
ここまで来たのだ。
よもや誰かが欠けるようなことがあるとは、京は全く思っていなかった。
「生きているなら返事しやがれっ!」
ほとんどやけっぱちで怒鳴ったとき、
「く…さなぎ?ここよ。八神もいるわ」
足もとで声がして、思わず後じさる。見ると半分瓦礫に埋まった状態のちづるが庵に覆い被さるようにしてうずくまっていた。
「八神は気を失っているだけ。無事よ」
そういって京を見上げたちづるの顔には脂汗が浮いている。
京は常人なら悲鳴を上げるほどの体中の痛みも忘れ、二人の上の瓦礫をどかし、そしてちづるの惨状に息をのんだ。
「全然、無事じゃねぇじゃねぇかよ…」
八神は無事だというちづるの服もボロボロで、そこら中に血が滲んでいる。特にその背中の火傷は怪我や血など見慣れている京から見て もひどいもので、一面が赤黒く焼けただれていた。
原因は容易に想像できる。最後の一撃を繰り出す間際、オロチはそんなことをすればお前たちも死ぬと言った。
どうりでダメージが少ないわけだ。
八神と草薙の力のぶつかり合いによる爆破から、ちづるはその身をもって二人を守ったのに違いなかった。
「神楽」
傷にふれないようにちづるを抱え上げる。その下にいた庵は、顔色は青ざめているものの目立った傷もなく、息もしっかりしていた。
「お前、俺たちをかばったな」
「とっさに守護結界を張ったんだけど、ちょっと、完全には無理だったみたいね」
「バカヤロウ!サポートしろとは言ったが体を張れなんて言ってねぇぞ!」
「大丈夫。全然、たいしたことないのよ?」
怒鳴る京に、息を荒くしながらもちづるは笑って答えた。
「二人とも無事で、本当、良かった…」
「神楽?!」
やばい!
ゆっくりと目が閉じられていく。その満足そうな笑顔がよけい京の心をかきたて、体中を悪寒が走る。
「やっと…」
「おい!しっかりしろ!」
急に力が抜けて重くなったちづるの体を支えながら、京は渾身の力で叫んだ。
「ちくしょう!誰かいねぇのか!!誰か!助けてくれ、死んじまう」





───彼女が泣いている。暗闇の中、一人で。声も出さずに。
泣くな、神楽。泣かないでくれ。お前が泣くと俺は…、どうしたらいいか、分からなくなる───


目を開けると、そこは白塗りの部屋だった。
独特の消毒のにおいがする。
「びょう、いん…?」
何か、夢を見ていたような気がするが思い出せない。
「京、気がついたか」
すぐ隣で聞き慣れた声が、良かった良かったと安堵のため息をもらした。
「紅丸?」
頭だけ動かして横を向くと、妙に笑顔の友人が首を傾げて「大丈夫か?」と聞いてきた。
その奥に見えるベッドには相変わらず青ざめた顔の八神が横になっていたが、こちらはまだ目覚めてないらしい。
「俺、また気ぃ失ってたのか」
大きく息を吐き、白い天井を見つめ、京はつぶやいた。
「あぁ、車に乗った途端にな。まったく、毎年何かあるからと思って待機しといて正解だったぜ」
ドーム外に控えていた紅丸たちが瓦礫を乗り越えて駆けつけてきたあたりからすでに記憶はあやふやだった。
「どれくらい気を失ってたんだ?」
「丸一日、くらいかな」
紅丸たちが病院に駆け込んだときはすでに日が暮れており、呼吸停止に陥っていたちづるはすぐさま手術室に運ばれた。京と庵の二人も 満身創痍の状態で衰弱が激しく、つい数時間前まで昏睡状態にあったのだ。この二人の快復力は、いくら鍛えたからだといえど、並以上の ものがある。
「まだ当分入院だとよ。着替えとかは、まぁ、あとで持ってくるよ」
「あぁ」
「あと、やっぱりあの騒ぎを報道陣が聞きつけて来てな……と俺で…だから大じょ……」
紅丸ながにやら大会のその後の説明をしているようだったが、その半分も、今の京の耳には届いていなかった。
<すべて終わった。終わったんだ…>
もう、オロチはこの世にいない。
体が重かった。
このまま寝てしまおうか…。
だが瞬間、京の頭の中に、一人の血だらけの女のビジョンが浮かんだ。
「で、さっきまで大門とか真吾もいたんだけどな。お前たちの家に連絡つけるんで一足先に帰ったぜ。明日また見舞いに来るってよ」
「神楽…神楽はどうした」
一瞬にして、京の眠気は吹き飛んでいた。
話もろくに聞かず言われた言葉に、紅丸の表情がこわばる。
「彼女は集中治療室だ」
「部屋は?」
「知ってどうする?」
「言えないのか?」
紅丸は京にちづるのことを聞かれることは予想していた。そして絶対に話さないと決めていた。
今の彼女の姿を、京に見せたくはなかった。
紅丸は一つ溜め息をつき、京を薄い毛布の上から軽く押さえるように手を置いた。
「ちづるさんのことは俺たちに任せておけ。お前も、衰弱している上に怪我人なんだから無理はするな。何も考えずにまず自分の怪我を治 すことに専念しろ、な?」
「怪我だと?」
起きあがろうとベッドについた腕に激痛が走る。
「ぐっ」
「ほら、言わんこっちゃない。肩をひどく打撲してるんだ」
頭にも包帯を巻かれ、湿布や絆創膏の数などは数える気も起きない。
「こんなもの…」
<こんなもの、神楽の傷に比べたら怪我でも何でもない!>
そう、最強の格闘家だ、天才だと言われてもこんなもの。女一人守れはしなかった。
小さなうめき声が聞こえて、ふと、隣に寝ている庵を見やる。
「そういや八神はどうなんだ?」
「だいたいお前と同じようなもん。あとは貧血と両手の火傷」
話がずれたせいか紅丸は明るく答えた。
「ま、奴の火傷もお前の傷も、キレイに消えるだろうよ」
「神楽のは?」
紅丸は言葉に詰まる。
「俺たちは見事に神楽に守られたって訳だ。立場ねぇな」
自嘲気味に吐き出された台詞に沈黙が流れる。
紅丸は「気にすんな」とか、「それが彼女の望みだったんだろ?」とか、「あの場合しょうがないんじゃん」とか、つまらない慰めしか 頭に浮かばず、結局「男としてつらいよなぁ」という結論に達し、どうしようもないから黙っていた。
  <ううっ、空気が重い>
ちょうどそのとき、面会時間終了のアナウンスが流れた。
「あ、じゃあ俺もう帰るわ。明日また来るから、おとなしくしてろよ」
渡りに船とばかり、紅丸は席を立つとそそくさとドアに向かう。
「待てよ、まだ部屋番号聞いていないぜ」
ドアに手を掛けたまま、紅丸はぴたりと止まり、しばらく考えたあと振り返った。
「けじめ、つけたいのか?」
じっと顔を見つける。
「…、わからない」
そういう京の表情は困惑しているようでもあったが、目に迷いはなかった。
紅丸はふっと苦笑した。なんとなく、京の気持ちが分かる気がする。決心は結構あっけなく崩れた。
「507号室だよ。じゃあな」
「ああ、サンキュ」
パタン…と扉が閉められ、どこかで滑車が滑るような音がする以外は、何も聞こえなくなる。
しばらくするとその音すらしなった。
静かだ…。
これは現実なのだろうか。実は全部夢で、目を覚ますと家にいて、いつもの神楽がチームを組めと怒鳴り込んでくるのかもしれない。
それから大きく息をつき、首を振る。
逃避してどうする。現実は目の前の一つだけだ。
 オロチを倒したからと言って、すべてが終わったわけではない。
「507号室か」
行かなくてはならない。
宿命というものの意味を知るために。
                       
                      
                      
 
 
真夜中の病院というものは、あまり気持ちのいいものではない。無音で無人、いやなイメージがつきまとう。幽霊など信じているわけで はなかったが、それでも気味が悪い。
浴衣のような白い病人服の裾を蹴り上げながら薄暗い廊下を歩いていた京は、ある一室の前で立ち止まった。
『507・神楽ちづる』
入ってベッドに横たわる神楽を見て、どうするというのだろう。自分にできることなど何もありはしないのに。
それでもこの衝動を抑えることはできない。
引き戸になっているドアを開けると、カーテン越しの月明かりに照らされる一人の女が目に入った。
暗闇に慣れた目には、うつぶせに寝かされているちづるがはっきりと見える。
真っ白なカバーの上に置かれた腕につながれている、何本ものチューブが痛々しい。
京はベッドの横に立つと、むき出しになっている包帯の巻かれた肩にそっと触れた。
「こんなに細い肩してたんだな」
手の中に収まってしまうその肩は、かすかに温かかった。ほっとすると同時に悔しさがこみ上げてくる。
「痛いのか?」
もちろん返事は帰ってこない。
それでも京は語りかけた。
「どうしてかばったりなんかしたんだ。俺たちの方が丈夫にできてるんだぜ?俺の怪我も、八神の両手の火傷もいつかは消える。女が一生 残る傷、つけやがって」
ちづるにつけられた呼吸器のこもった音が、やけに大きく聞こえる。
試合では歴戦の格闘家たちの誰にも劣らぬ強さを見せ、チームのリーダーとして率いてきた。
あの常に冷静なものの見方が気に入らなかったが、彼女がいつも何かに苦しんでいるのだけは知っていた。
気付いたのはいつだったか。初めてチームを組むことになった去年、打ち合わせのため、彼女の家へ訪ねたことがある。ちづるは予想に 反して一人暮らしをしていた。
「いいとこに住んでんな。結構広いじゃん」
「本当は、二人で住むはずだったから」
言ったあと、ついと顔を逸らし、表情を隠した。
そのときは男でもいたのかと思ったが、あとになってその人物が彼女の姉だと知った。
オロチ一族の四天王、風のゲーニッツに殺されたというちづるの双子の姉。
気持ちは分かる、などという安っぽい台詞は頭をかすめもしなかった。
『世界を救うために戦わなければならない』
よく聞かされた言葉。しかしそう言うたび、ちづるは暗い表情を見せた。
最後の戦いの前の彼女の言葉を思い出す。
「私は護る者。その役目を今は誇りに思います。行きましょう。そして終わらせるのです」
なぜ気付かなかったのだ。神楽はあの時点ですでにこうなることが分かっていたのだ。死ぬ気だったのだ!!
宿命云々の話を聞かされたとき、馬鹿馬鹿しいと思った。実際、口に出して笑った。
しかしその宿命とやらは、神楽に重くのしかかっていたに違いない。
命を捨てられるほどに。
何度もあった意見の衝突。最初のうち、喧嘩が絶えることはなかった。
言い合うことにさえ疲れ、口をきかなくなったこともあった。
京はベッドの脇に両膝をつき、両手で顔を覆う。
「死ぬな…」
まだ、知らないことが、聞きたいことがたくさんあるんだ。
悔しい。
助けられなかった。
いつの間にか、その苦しみを和らげてやりたいと、力になってやれたらと思うようになっていた。
もう、駄目なのか?間に合わなかったのか?
違う!
このまま、終わらせはしない!!
「ふん、結局生き残ったわけだ」
「!」
突然した声に振り返ると、寝ていたはずの庵がドアに寄りかかるようにして立っていた。
「八神っ!」
庵は組んでいた腕をはずすと、ゆっくりとベッドへ近づいてくる。
『結局生き残った』という台詞が京の心に引っかかった。
「馬鹿な女だ」
「てめぇ、神楽が死ぬ気だったの知ってやがったな」
庵はあざけるように笑う。
「貴様は気づかなかったのか?」
京は前から庵のことを嫌いではあったが、このときほど殺してやりたいと思ったことはなかった。
「ッ!どうして止めなかった!!」
「止めるだと?死にたければ死ねばいい。止めてやる義理も何もない」
試合前の強い眼差し。
あれは死を決意した者の目だ。
本人がそれを望んでいるのなら、止めることなど出来はしない。唯一出来ることは、死の可能性を減らすこと。一緒に戦いの場へ赴くこ とだけだ。
「ならなんでここに来た。心配だったんじゃないのか?本当は気に・・・」
「笑わせるなっ。哀れな女の無様な姿を見に来ただけだ」
このまま死ぬというのならそれはそれでよいと庵は思った。
<もう少しシュミレーションしてみたかったが>
しかし、この様子だともう、死んでもおかしくないだろう。
「お前、俺と紅丸の話聞いてたんだろ。どこからとまではわからねぇが、こいつは俺たちをかばってこうなったんだぜ?」
「だからどうした。せめてもの慰みに、苦しまないようとどめを刺してやるか?」
京は舌打ちすると、吐き捨てるように言った。
「やっぱり、俺にお前のことを分かる日はこねぇみたいだな」
「この女のこともな」
そういうと、庵は軽くちづるの首に触れる。
「死なせてやればいい。こいつは心からそれを望んでいる」
「触るな!」
その手を払いのけ、すごむ京に冷笑を浴びせる。
「貴様に分かる日など、一生来まい」
捨て台詞のように言い残し、庵は部屋を出ていった。
「心から望んでいる?馬鹿言うな」
自分にはいつも、彼女が苦しみや心の闇から這い出そうとしているようにしか見えなかった。
だから、少しでも手助けできればと…。

京が病室へ戻ったとき庵のベッドは空で、そのまま朝になっても戻ってくることはなかった。

                 



「あなたは優しいのね」
「なんだと?」
「あなたは優しい人よ。だから心を壊さなければ、暴走をしなければ真に人を傷つけることが出来ない。違う?」
「…」
「私は違うわ。私はいつでも、殺したいと思う相手を、人を殺すことが出来る」
馬鹿な女だ。
姉を失ったとき、あいつは自分の心までもを失っていた。だからすべてが終わったとき、死を見ることしかできなかったのだ。
庵は自分の部屋で横になりながら自嘲気味に笑う。
もっとも、自分も京を殺せば同じような結末を迎えるのかもしれない。
そう思うと妙におかしかった。
今回、庵は神楽ちづるを通して未来の仮の自分の姿を見ていた。
一つの目的のためだけに生きている。そんな人間が目的を果たしたあとにはなにが待っているのか。
答えは狂気か死か。どちらにしても抜け殻だ。
<くだらん>
結局は茶番だ。大会も何も、ただの暇つぶしでしかなかった。
自分とあの女はあらゆる意味で違うのだから。
痛む腕を眺めながら、ベッドに横たわるちづるの姿を思い出す。生気のかけらもなく、ほんの一日前、戦いの中を生きていたときの面影 も感じさせはしない、あの情けない姿を。
庵はベッドの脇に立てかけてあったベースを手に取ると静かに弾いた。
<奴は…死ぬのか?>
一つだけ、聞き忘れたことがある。
「お前は、誰を殺すというのだ…」
自然と指に力がこもり、隙間無く巻かれた包帯に血が滲んだ。

                      



少女が一人、立っている。
自分であるようでいて、自分ではない。
<姉さん>
白い胴着と赤い袴。そう、家に帰ると姉はいつもこの姿だった。家での厳しい規定が姉を苦しめていたのだと、ちづるは今でも信じて疑 わない。
<良かった。姉さん、無事だったのね>
少女はその言葉に応えるかのように微笑み、次いでその胸を赤く染めた。
<ああ!!>
傷口を押さえ倒れる姉を支えようと腕を伸ばし、初めてその自分の両手が血にまみれていることに気付く。
どうして忘れていたのか。無事であるわけがない。最愛の姉は五年前・・・
<私が殺した>


「姉さん…」
ちづるは自分の声で目を覚ました。
暗く、何も見えはしないが、薬品の匂いでここが病院であることは容易に想像がつく。
<死ねなかった>
また、生き延びてしまった。
あのとき、やっと、やっと死ねると思ったのに。やっと解放されると思ったのに。
また、生き延びてしまったのだ。
<これも、運命ってやつかしら>
だとしたら、運命はよほど意地悪なんだろう。
うつぶせの状態は寝苦しいが寝返りをうつほどの元気もない。
ひきつる背中に、そういえば火傷をしたんだと思い出す。
草薙と八神はどうしたのだろう。無理矢理あんなことに巻き込んでしまった自分のことを恨んでいるかもしれない。
<あんな死にそうな目に遭っちゃね>
すべての人間が自分と同じように死という解放を望んでいるとはさすがに思ってはいない。たいていの人にとって、死とは恐怖であると いうことぐらい承知している。
<あの二人に関しては分からないけど>
死に対して恐怖は感じてないだろう。だが、それを望んでいるわけもない。
<私、どこか変なんだろうな>
虚しい。
オロチを倒せば得られるだろうと漠然と思っていた満足感など、どこにもありはしない。だがそう、こんなものなのだろう。オロチがい ようがいまいがどうでもいい。
結局はただ、仇討ちの延長だった。
<私は正義の味方じゃない>
何も失わないために強くなった。
しかし、もう失うものなどありはしなかった。
世界がどうなろうと知ったことではない。だが、姉はそれを望まないだろう。
だから倒した。
嘘をついて。人を騙して、利用して。
<これから、どうしようか>
罪深い己を殺す策でも考えてみようか…。
あぁ、瞼が重い。
願わくば、もう二度と目覚めることのありませんように。
ちづるはもう一度、深い眠りについた。




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